車椅子 販売の特徴
日中の大変だった出来事を話してみても、「そうですか? 家では落ち着いているのですけど」と当時は真剣にはとりあってくれませんでした。
家族は身内だからそう感じるのかもH ・H ・とも思いましたが、正直に言ってこの頃は家族との関係はよくありませんでした。
平成10年4月、「いくのさん家」は鳥取市からE型デイサーピスセンターの認可を受けることになりました。
同時にスタッフも増えて、全体の雰囲気が少し変わりました。
以前はお年寄りとの関係を職人的に追求するというストイックな感じだったのですが、パーツと明るく、ざっくばらんな雰囲気になったのです。
Aさんとの関係ももっと自由な発想で相手ができるようになりました。
Aさんの口からは、ふとした拍子に思いつく身内の名前(たかちゃん、よしこちゃんなど)がよく出てきます。
私のことを夫だと,思っているときには、わざと乱暴な夫の口調で相手をしてみたりしました。
すると不思議なもので、Aさんの行動に変化はないものの、Aさんとの心の壁が少しずつなくなっていくような気がしました。
時にはわざとAさんを叱ってみたり、トンチンカンな会話をして一緒に大笑いしてみたり、わざわざ怒らすようなことをするなど、ちょっと異様な人間関係ができました。
名前の呼び方も時間帯で変えてみました。
朝お会いしたときには遠慮して他人行儀に「Aさん」と声をかけます。
「いくのさん家」に着いて、身近な雰囲気になったらファーストネームに「さん」をつけて、私をおとうちゃんと呼び始めたら「おかあちゃん」と呼び、帰るころには本来の威厳ある家庭人のAさんに戻ってもらうために、わざと「Aさん」と呼びます。
説明しにくいのですが、Aさんと向き合う時聞が長いということが、なんでもやってみようという気にさせたのです。
もし嫌われても、また明日仲よくすればいいやという聞き直りです。
そんなことをしているうちに、正直言って苦手だったAさんのことが、他人とは言えないほどかけがえなく思えるようになりました。
もしこの人が死んでしまったら、と考えただけで涙が出そうになりました。
おもちゃの赤ちゃん人形があると子育てをしなくてはと,思って、抱えてあやしたりします。
いじわるな私は本人が落ち着かなくなると、わざと赤ちゃん人形を床に落としたり、頭を叩いたりします。
するとAさんはカンカンになって怒り、子育てに励みます。
しばらくするとまた興味がなくなるので、また私は赤ちゃん人形を折櫨します。
この繰り返しでAさんの「帰る」という気が失せて、そのうち自分の家で子育てをしている気になっていくのです。
またBさんというおばあさんがいるのですが、この方の口調が乱暴で、機嫌が悪いと1日中「アホッ、パカッ、うるさい!」とイスに座ったまま誰彼かまわず怒鳴っている人で、Aさんはとても恐れていました。
たまたまBさんのそばを通りかかったAさんは、自分が「帰る」と騒いでいることを叱られた、と,思ったようで「わしが悪かった、許してかあさい」と泣いて謝ったのです。
だ」と泣きはじめたのです。
2人とも断然別のことを言っているのに突然共感して泣いたことに私はとても驚きました。
が、私はAさんが最近のAさんは以前に比べて体力が落ちてきて、血圧が高いためか痴呆も少しずつ深くなってきているようです。
外に出歩くこともほとんどなくなりました。
Iいくのさん家」に来ても穏やかで、多少の混乱はあるものの短時間になりました。
落ち着いたというよりは「ぐずぐずしてはいけない。
今自分は何をしなければならないのか」というような呪縛から、ようやく解き放たれて自由になったような感じです。
どんなやり方をすればこの宅老所という空間で、上手に人間関係を保てるのかを特に深く考えさせられました。
たとえば被害妄想のあるお年寄りが何かに怒っているとします。
わからないうちはなんとかその妄想の誤解を解こうと苦心するのですが、そんなことにはたいして意味はないのだと思うようになりました。
それよりも、おかしな殿様カツラや女中さんのカツラでもかぶって、怒っている本人に大笑いしてもらって、そのうち忘れてもらえたらいいなと思うのです。
「いくのさん家」にはさまざまなそういうグッズがあります。
そういう手段をニセ解決だと言う人もあると思いますが、問題を真正面に取り合っては解決しないこともあるのではないでしょうか。
妄想を必要以上に問題視することで、その人の居心地が悪くなっては本末転倒です。
送迎の車の中でケンカが始まることもありますが、割って入って止めるよりは、運転席のスタッフと助手席のスタッフがもっと大きな声で大ゲンカを始めるとすぐに止んで、しまいます。
そうすればお年寄りのほうが「やめなんせい」と逆に止めに入ります。
それと、宅老所に限らずどんな現場にも当てはまるのでしょうが、お年寄りとの関係をうまく築いている職員というのは、お年寄り同士の人間関係を構造的に把握している人が多いと思うようになりましたそれぞれの家庭があり、ここまでの人生があります。
意識していないと私たちはこうやって集まっていることを当たり前と思い、そのことが持つ意味を見いださず、1人ずつの個性にしか目を向けないのですが、よく見ればそのなかでお年寄り同士の関係がもたらす効果が想像以上に大きいということに気付くのです。
難しく言えば、1人ずつのお年寄りをひとつの要素ととらえ、その要素が絡み合うことで、ひとつの共同体が構築されている、ということをわかったうえで動いているかどうかが大きな意味をもっていると思うようになりました。
それと「いくのさん家」を始めて、痴呆をもついろんなお年寄りとお付き合いして強く感じるのが、「今がよければいいのだと」いう共通する雰囲気です。
怒っているお年寄りにも笑っているお年寄りにも、心の中にはこれから先になにか不幸が起こるかもしれないなどという余計な心配ごとはあまりなく、今のこの瞬間を楽しむという気持ちにあふれでいます。
小規模の施設のメリットとして、判をついたように、情緒の安定がもたらされるという言葉を聞きますが、問題行動といわれるものには原因がさまざまで、家庭環境や生い立ちなど、実際には他人が介入できない部分が多いのです。
しかもそんな潰末なことを本人の全体としてとらえてしまう傾向になりはしないかと思うのです。
そんなことにとらわれるよりは、ただそばに寄り添って、少しでも楽しい瞬間を提供するということが重要ではないか、と感じるようになりました。
介護保険など「いくのさん家」をとりまく状況は大きく変化しつつありますが、この雰囲気でいつまでも続けていけたらなあと素朴に思っているところです。
当初、有料でケア(介護)を提供する会社は珍しく、1時間あたりスタートしてからすぐにお客様からのご依頼がありました。
「お金を払ってでも(介護を)頼みたい」という方ですので、やはり重度の方がほとんどで、訪問を始めて1週間くらいで亡くなる方も珍しくありませんでした。
良くお支払いいただいてきました。
この実績は医療機関、訪問看護ステーションなどでも認められ、「ライフ・ケア浜松」を紹介してくださることが多くなりました。
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